早期離職を防ぐ内定者0年次®育成のすすめ~入社前にマインドを切り替える手を打とう~(第1回)
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【第1回】「御社」から「自社」に意識を変えるために

昨今の新卒採用では、採用数確保だけではなく、「内定承諾後の辞退」「内定ブルーによる入社前のモチベーション低下」「入社後ギャップによる早期離職」など、新たな課題が頻発しています。
採用数確保だけでなく、「いかに採用した人材が定着・活躍してくれるか」が企業の発展の鍵を握ります。それには、「内定~入社までの期間(0年次®)」に、どのような意識変革を内定者主体で起こせるか、また、「自分・同期・会社」という3つの理解を深めることが重要です。それらを実現する内定者向けのアプローチを、我々は『0年次®育成』と名付けました。
内定者が自分の決断(内定承諾)に納得し、社会人になることへの不安が払拭され、高いモチベーションを維持して入社をしてもらうための『0年次®育成』は、内定承諾後辞退の防止や、入社までのモチベーション維持もしくは向上を図ることができ、新入社員の早期即戦力化を目的に、多くの企業に導入されはじめています。
内定者の“お客様気分”を切り替える
売り手市場の昨今、企業が学生に寄り添う丁寧な対応をするほど、学生は「会社の一員として何ができるか」ではなく、「会社は自分に何をしてくれるか」という受け身の姿勢、つまり “お客様気分”になっていることが少なくありません。そのため、いつまで経っても「御社」と呼ぶなど、心理的な距離が埋まらないまま入社を迎えてしまいます。
しかし、入社後にはすぐに「会社の一員」としての当事者意識が求められます。当事者意識が醸成されないと、いつまでも受け身で「教えてもらう・育ててもらう」という考えが邪魔をして、成長の妨げになります。
自ら「成長することで会社の一員として役割を担い、社会に貢献していく」という意識が、早期活躍には欠かせません。では、内定者の当事者意識醸成の第一歩は、なんでしょうか。
それは、彼らの会社への呼称を「御社」から「自社」へ切り替えていくことです。
「御社」から「自社」への切り替えに必要な3つのステップ
この「御社」から「自社」への意識の切り替えは、次の3つのステップを段階的に行うことで実現できます。
1.内定承諾理由の明確化
まずは内定者一人ひとりが、自分自身の就職活動を振り返り、「なぜこの会社の内定を承諾したのか」という理由を改めて言語化することが必要です。なぜなら、内定者の中には「ここしか内定がもらえなかったから」「親や先生に勧められたから」「相対比較の結果」というような、“自分の決断”とまではいえないような理由が、内定承諾のきっかけになっている人もいるからです。
この過程では、自分の就職活動を振り返りながら、「自分がどんな価値観を持ち、何を重視して軸を決め、企業選びをしてきたのか」を考えます。この工程を通じて、「原点には自分の価値観があり、内定承諾という決断は、自らの決断なのである」ということを再認識することができ、“就職”を自責で捉えられるようになります。
また、この工程を他の内定者とのグループワークの中で行うことで、互いを深掘りし合うことができ、「自分理解」と「同期理解」が同時に実現します。
2.自社の魅力の整理
就職を自分事化できたら、続いて深い企業理解を通して「自分の決断が最善の決断だった」と認識させることが大事です。
就職活動中の学生は、自分の人生の大きな岐路に立っているわけですから、当然“自己視点”が強くなります。そのため、業界研究や企業研究をするとはいえ、それはあくまでも自分の価値観のフィルターを通してのもので、収集する情報に偏りが出てしまいます。
この過程では、自社の魅力を『7つの魅力要因』に分けて網羅的に分析し、分析過程の中で事実情報をさまざまな魅力に変換していきます。
例えば、「社員食堂がある」という事実に対し、「経済的な安心感がある」という魅力や、「社員のことを大切にしている会社だ」という魅力など、さまざまな魅力が挙がります。一つの情報でも見方を変えると、さまざまなものの見方があることを認識することができ、多様な側面から魅力を再認識することができます。
その工程を通じてポジティブに「会社理解」が深まり、改めて「自分が内定承諾した会社はいい会社だ」と、自分の決断に自信を持つことができます。

3.自社の魅力の発信
内定者が自分の決断に自信を持てるようになったら、続いて会社の魅力を他者に伝えるというミッションを与え、「御社」から「自社」へと意識を変えていきます。
例えば、翌年の就活生に向けた説明会スライドや採用パンフレットを、企業の一員として作成することで、自然と「自分たちの会社」という意識が醸成されていきます。
学生の主体的な決断をサポートする
政府は経団連等に対し、2027年3月卒学生の就職に関して、採用活動日程のルール順守と、「オワハラ」の防止を徹底するように要請を出しました。その中でも「内々定・内定辞退は、就活生の正当な権利」と言及されているように、内定そのものに拘束力はなく、学生が納得できるまで就職活動を継続することを企業が妨げなくてはなりません。
だからこそ企業には、内定者を説得したり口説き落としたりするのではなく、学生が主体的に自分の決断に自信を持って「良い会社に入るんだ」と納得し、社員になる覚悟を持つためのサポートをすることが求められます。
次回は、「内定ブルーを解消するために」というテーマで、内定者が抱える漠然とした不安を解消し、前向きな気持ちで入社してもらう方法についてお伝えします。

— この記事の著者
シーズアンドグロース 代表取締役 河本英之
上智大学卒業後、(株)リンクアンドモチベーション入社。その後、2010年に独立しシーズアンドグロース(株)を設立。「人の可能性を信じるという」理念を掲げ、独自かつフルオーダーメイドのサービスで、大手から中堅・中小企業まで幅広い企業の新卒採用・人材育成を支援する。企業と学生のミスマッチ防止イベント「カレッジ型イベント(R)」では講師を務め、年間5,000人以上の就活生の決断に影響を与える。その他、経営者・人事担当者向けセミナー講師としての登壇、書籍の執筆なども行う
【出典元】
本記事は『月刊 人事マネジメント』25年9月号に掲載されたものです(転載許諾済)。
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