早期離職を防ぐ内定者0年次®育成のすすめ~入社前にマインドを切り替える手を打とう~(第3回)
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【第3回】学生と社会人の違いを理解してもらうには

入社1年後の定着率は「入社前」に決まる
早期離職の最大の原因は、入社後に生じる「こんなはずではなかった」というギャップです。ギャップの要因は多岐にわたりますが、「学生」と「社会人」の違いをあらかじめ理解させることで、その多くを未然に防ぎ、早期離職の防止につなげることができます。
例えば多くの学生が、今までは教育として“受動的”に授業を受けてきました。しかし、社会に出ると突然、自ら考え“能動的”に行動することが求められます。この急激な変化に対応できず、学生がいつまでも学生気分のまま社会人への切り替えがスムーズにいかないと、社会人としてのスタートダッシュに出遅れ、「こんなはずではなかった」とモチベーションの低下につながりやすいのです。
こうした「こんなはずではなかった」というギャップこそが、早期離職につながる要因と言えます。 そこで重要となるのが、内定者のうちから「学生と社会人の違い」や、「社会人になるうえでの心構え」をきちんと理解させておくことです。特に内定がゴールになっている学生は、入社前の準備が不足しやすく、スタートダッシュが遅れ、入社後のつまずきやモチベーションの低下につながりやすい状態にあります。
従って、入社後ではなく、内定承諾直後の「この会社で頑張りたい」という学生のモチベーションが高い時期に、社会人になる準備と心構えを形成させることが効果的です。
では、「学生」から「社会人」への心構えを促すために、具体的に何を教えるべきでしょうか。今回は入社前の学生に理解させるとよい3つのポイントをご紹介します。
【ポイント1】「全体最適」の視点を理解させる
学生と社会人の違いについて、「通勤が必要になる」「仕事に多くの時間を費やす」などと、漠然と捉えている学生は少なくありません。そのため、学生と社会人では評価や考え方などの根本的な価値基準が大きく変わることを内定期間中に具体的に理解させ、心構えを促す必要があります。
例えば、「取り組みへの評価」では、学生時代は主に“プロセス”が重視されます。そのため、結果に結びつかなかったとしても、努力した姿勢やその過程を親や教師が見守ってくれ、評価してくれました。就職活動の面接におけるガクチカでも、多くはプロセスが評価されていたはずです。しかし社会人になると、プロセスに加え“結果”も重視されるようになります。いくら努力しても、組織や顧客が求めている結果が伴わなければ評価は得られません。がむしゃらに努力するのではなく、目標を明確化し、効果的なプロセスを定め、目標達成に向けて粘り強く取り組み続けることが求められます。
このように、学生時代に当たり前に享受していた環境や価値基準が、社会人になって一気に逆転してしまう場面は多々あります。その変化に気づかず、心構えができないまま社会人になると、入社後ギャップに苦しむことになります。
また、同時に学生時代の「自分がどうしたいか」といった“個別最適”の考え方から、「組織やお客様のためにどうするか」といった“全体最適”の視点への転換も求められます。全体最適への視点の転換ができないと、「こんなに努力したのに評価されない」「教えてもらっていないからできなくて当たり前」と主張し、先輩社員を悩ませる困った新人を生む要因となります。だからこそ、内定期間中に、全体最適の視点を具体的に理解させることは、新入社員が早期に戦力となるための重要なフォローであり、会社と学生の双方にとってメリットがあります。
【ポイント2】「自責スタンス」を理解させる
自責スタンスとは、物事を自分ごととして捉え、問題が起きた際に「他者」や「環境」のせいにするのではなく自分の中に原因を探し、学びに転換する姿勢を指します。
「自責スタンス」は、社会人になれば自然と身につくものではありません。人間は幼い頃は「他責スタンス」で生きていますが、成長の過程で、周囲との関わりを通して「自責スタンス」を養っていきます。そのため自分が学生として今までいかに守られてきたか、自責スタンスが足りなかったかを理解させることが重要です。
しかし「自責スタンス」といわれても、多くの学生はピンと来ません。そこで、ケーススタディなどで学生がイメージしやすい状況設定を用意し、自分ごととして考えてもらい、なぜ自責スタンスが必要なのか、自責スタンスの不足が招く周囲への影響を理解させます。ケーススタディを通し、学生が自責スタンスで考えることの具体的なメリットに気づけると、「なぜ自分は自責スタンスで行動するべきなのか」が明確になり、強力な動機づけができるようになります。
内定者期間中は、学生という立場上、自分目線が強くなりがちです。また、売り手市場の昨今はその傾向がより顕著です。そうした事情を踏まえ、入社前に、少しずつ自責スタンスで考え、行動できるように促すことが重要です。
【ポイント3】「相手視点」を理解させる
「自責スタンス」と同様に社会人に重要なのが「相手視点」です。ビジネスにおいて、相手との信頼関係の構築は必要不可欠です。そのために、相手視点を意識した振る舞いやコミュニケーションが求められます。また、入社後の研修等で学ぶ「ビジネスマナー」も、本質は相手への気遣い(=相手視点)といえます。
相手視点についても、ケーススタディなどで学生がイメージしやすい状況設定を用意し、なぜ相手視点が必要なのか、自分視点や他責思考が強いと周囲にどういった影響を与えてしまうのかを具体的に理解させることがおすすめです。相手視点の考え方は、「こういう言い方をしたら嫌がられるかな」や「こういう態度は周囲に気を使わせないかな」といった、今すぐ実践できるものばかりです。だからこそ、入社前に事前準備させ、思考を習慣化させておきましょう。
早期離職を防ぐアプローチは内定者0年次から始まっている
「学生」から「社会人」への意識変革を図るためには、学生と社会人の違いが表面的なものだけではなく、内面的なスタンスにあることを伝える必要があります。同時に、これまでの自分とは大きく意識を変える必要があることを学生に理解させ、内定者期間中に社会人になるためのマインドセットを行い、早期離職の防止につなげていきましょう。
全 3回の集中連載で、内定者期間中に行う教育(社会人への準備)である「0年次育成」というテーマを通し、新卒の早期離職を防ぐ手法や考え方を共有させていただきました。私は,“真の採用成功”とは,採用して終わりではなく、採用した学生が、その後会社で活躍し、定着してくれることだと考えています。そのためには、内定後から入社前の期間に、社会人として気持ちの良いスタートダッシュを切ってもらうためのフォローである“0年次育成”が重要なの
です。

— この記事の著者
シーズアンドグロース 代表取締役 河本英之
上智大学卒業後、(株)リンクアンドモチベーション入社。その後、2010年に独立しシーズアンドグロース(株)を設立。「人の可能性を信じるという」理念を掲げ、独自かつフルオーダーメイドのサービスで、大手から中堅・中小企業まで幅広い企業の新卒採用・人材育成を支援する。企業と学生のミスマッチ防止イベント「カレッジ型イベント(R)」では講師を務め、年間5,000人以上の就活生の決断に影響を与える。その他、経営者・人事担当者向けセミナー講師としての登壇、書籍の執筆なども行う
【出典元】
本記事は『月刊 人事マネジメント』25年11月号に掲載されたものです(転載許諾済)。
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