人が辞めない組織を作る「人材受け入れ研修」のすすめ(後編)

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解決編:受け入れ側のマインドとスキルを磨く

第 1回では、現代の早期離職を生む4つの要因をお伝えしました。第2回では、こうした職場環境・制度の課題を解決し、早期離職を防ぐための受け入れ側のマインドとスキルを磨く方法をお伝えします。

OJT担当者に求めれられる4つのスキル

新入社員育成の本質を担うのがOJT担当者です。

多くの企業において、新入社員研修は入社後から約1ヵ月~半年間にわたり実施されます。しかし、研修会場での集合研修は大人数が対象のため、教えられることに限度があり、業務の全体像や基礎知識を伝えるに留まりがちです。そのため、実務の習得は、配属後に現場のOJT担当者が指導するのが一般的です。OJTの主な目的は、仕事のイロハを教えることであり、その関わりは研修担当者以上に長期かつ密接したものとなります。従って、OJT担当者には主に以下の4つのスキルが求められます。

①動機形成スキル
②寄り添い的確に指導するスキル
③フィードバックスキル
④信頼関係構築スキル

多くのケースでは、配属後、新入社員に何をどう教えるのかはある程度決まっています。しかし、それをそのまま新入社員に教えるだけでは、OJT担当者がいる意味がありません。

各業務の意味づけを行い、過去の新入社員がどこでつまずいてきたかを理解したうえで、どうアドバイスすれば分かりやすいかを考え、新入社員の心情や習熟度合いに寄り添いながら的確に指導し、成長につながるフィードバックができることも重要です。

さらに,モチベーションが落ちてきたタイミングで,再び動機づけできるスキルや,信頼関係を構築するために,新入社員はもちろん,部署のメンバーの特性を理解し,新入社員の“スイッチ”や“地雷”の理解も求められます。

これらは総じて「対人スキル」といえるでしょう。

このような対人スキルは、OJT研修で一度教えるだけでは到底理解できません。だからこそ、新入社員との関わり方や、持つべき視点にズレが無いか、何に悩んでいるのかを定点観測しながら、足りない部分をキャッチアップして都度フォローしていくことが求められます。

メンターに求められる役割とOJT担当との違い

メンターの役割は、実務以外のあらゆる面で新入社員をサポートすることです。OJT担当者がメンターを兼ねることもありますが、メンターは直属の上司ではない他グループ・他部署の先輩が担うことを推奨しています。

なぜなら、OJTと兼任すると業務に直結する対話が主になり、その他の話がしづらかったり、「こんなことを言ったら評価につながるのではないか」といった不安感を抱いたりして、新入社員の本音が情報として上がってきづらくなるためです。

また、OJT担当者以上に「対人スキル」、とりわけ「信頼関係構築スキル」が求められるのがメンターです。見落とされがちですが、メンターの最大の強みは「新入社員と同じ立場でコミュニケーションできる」点にあります。

実務の指導者として上の立場からコミュニケーションを取る必要があるOJT担当者とは異なり、メンターは実務を教える必要がないからこそ、新入社員が担当している業務について「今どんな仕事をしているの?」「その業務は分からないから教えて」と、あえて教えを乞うようなアプローチも可能です。こうした対等な関わりを数多く持てること、他部署の先輩だからこそ本音を打ち明けられることこそが、メンター制度のメリットです。

このような求められる役割の違いを明確にすることで、メンター自身も関わり方に迷いがなくなります。ただし、メンターに求められるスキルも一朝一夕で身につくものではないため、OJT同様、定例のフォローアップや状況の定点観測を行うことが、制度を成功させる重要なカギとなります。

適切な指導・指摘から逃げない上司・リーダーの育成

まず、上司・リーダーの本質は、究極の主体性にあります。

仕組み化や、メンバーの状況把握、自分が不在でも回る組織づくりをミッションとするマネジャーに対し、上司・リーダーの本質は当事者意識を持ち、組織課題の解決に挑むことにあり、これは役職でなく役割です。そのため、まずは本人たちに役割期待を明確に伝え、主体性を存分に発揮してもらうことが重要です。

ハラスメントを過度に恐れ、踏み込んだ指導・指摘ができない上司・リーダーの存在は多くの企業で課題になっていますが、こうした状況だからこそ彼らに求めるべきなのが「全体最適の視点」と「相手視点」です。踏み込まない指導の背景にはハラスメントへの不安はもちろん、「自分が嫌われるのではないか」という不安もあります。しかし、全社視点と相手視点があれば、本来これは些末なことです。組織全体の利益を考えたときに伝えるべきこと、新入社員を一人前に、ひいてはどこに出しても恥ずかしくない社会人へと育成する責務の重さを正しく認識できていれば、ハラスメントを過度に恐れず、本質的な指導ができるはずなのです。

そのため、まずは上司・リーダーが持つべき視点を教えること。そして、「先輩の背中を見て育ってきたから教え方が分からない」「ハラスメントにならない教え方が分からない」という不安に対して、時代に合った指導の仕方や、OJT・メンター同様、信頼関係を構築するコミュニケーションの取り方を教えることが重要です。

フィードバックの本質を新入社員に伝える

最後に、新入社員がフィードバックを正しく受け止められるようにするためのポイントをお伝えします。

指摘を受けた新入社員が過度に落ち込んでしまったり、嫌われていると誤解してしまったりするケースは少なくありません。こうした誤解は、結果として「社内に自分の居場所がない」という心理的孤立を生み、早期離職に直結するリスクをはらんでいます。だからこそ、上司からのフィードバックは、新入社員の皆さんに伸びしろがあるからこその、次の成長に向けたアドバイスであり、人格否定ではないことを繰り返し伝える必要があります。

実際、組織内で立場が上になるほどフィードバックは得られなくなるものです。そのため、私はフィードバックを若者の特権だと伝えています。

指導する側にもストレスがあり、褒めているほうが心理的な負担はありません。それでも自分の成長のためにリスクをとって伝えてくれているという背景に気づかせ、正しく受け止める姿勢を育むことが極めて重要です。上司と新入社員の間に、フィードバックに対する共通認識があるだけでも、現場での指導のしやすさ、受け止めやすさは格段に向上します。

第 1回で、若手社員の早期離職を防ぐカギは「制度の有無」ではなく「コミュニケーションの質」だとお伝えしました。受け入れ側の教育においても、「研修の有無」ではなく、その後の「意識・行動変容」が重要です。研修をやって終わりではなく、定点観測を行い、実行できるまでフォローし続けることが重要なのです。

— この記事の著者

シーズアンドグロース 代表取締役 河本英之

上智大学卒業後、(株)リンクアンドモチベーション入社。その後、2010年に独立しシーズアンドグロース(株)を設立。「人の可能性を信じるという」理念を掲げ、独自かつフルオーダーメイドのサービスで、大手から中堅・中小企業まで幅広い企業の新卒採用・人材育成を支援する。企業と学生のミスマッチ防止イベント「カレッジ型イベント(R)」では講師を務め、年間5,000人以上の就活生の決断に影響を与える。その他、経営者・人事担当者向けセミナー講師としての登壇、書籍の執筆なども行う

【出典元】

本記事は『月刊 人事マネジメント』26年8月号に掲載されたものです(転載許諾済)。

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