会社の未来を見据えた人材戦略~「採用」と「受け入れ」の両面からアップデートを~(第2回)

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【第2回】革新人材の採用3つの視点

前回、「革新人材」という言葉が、組織内で“便利な言い回し”として、明確な定義や共通認識を持たないまま使われている問題点を指摘しました。このように曖昧な定義のまま採用活動を続けていては、いつまでたっても革新人材を採用することはできません。なぜなら、採用は「設計」が命だからです。組織に革新をもたらす人材を言語化し、その求める人物像を学生に正しく届け、見極め、採用していくためには戦略的な採用設計が求められます。そこで第2回では、革新人材の採用を成功に導く「3つの視点」をお伝えします。

【視点1】求める人物像の明確化

「革新人材」について、多くの企業が掲げる人物像は驚くほど似通っています。「今までにいないタイプの」「前例に捉われない」「自ら考えて動ける」……このような募集要項では革新人材を言語化できているとはいえません。例えば、「自ら考えて動ける」人材とはどのような人材でしょうか。

・ 指示がなくても動く人
・ リスクをとって行動できる人
・ 自身で仮説を立てPDCAを回せる人
・ 目標に対し、周囲を巻き込みながら行動できる人

このように、「自ら考えて動ける人」といっても、様々な志向性があり、組織によって革新人材に求める人物像は異なるはずですが、募集要項には同じような言葉が並びます。その結果、学生は学生が思う「革新人材」らしさをアピールし、企業は自社に合わない「革新人材」を見抜けず、入社後ギャップが生まれてしまうのです。さらに、求める人物像が具体的に言語化されなければ、社内で共通認識を持つこともできず、学生とのコミュニケーションや評価基準にもばらつきが出てしまい、狙って採用することができません。

では、「言語化できている」状態にするために何が必要なのでしょうか。カギは「能力」ではなく「志向性」の言語化です。なぜなら、能力は入社後の学習や研修、経験を通して比較的容易に習得・向上させられますが、志向性は々人の価値観やパーソナリティに起因するため、短期間で直接的に教えることが難しいからです。

【具体例】

能力…コミュニケーション力、問題解決力、リーダーシップ
志向性…目標の達成にやりがいを感じる、自身のスキルを高め続けることに関心が強い

また、求める人物像に「コミュニケーション力が高い」といった能力を記載した場合は、どのような場面における、どういったコミュニケーション力の高さを求めているのか具体的にイメージしづらく、そもそもその能力自体に自信のある学生も少ないため、アピールさせてもあまり意味がありません。そのため、今後の会社の方針を握る経営戦略策定者(経営層など)に求める人物像のヒアリングを行い、共通する志向性を洗い出すことが重要です。

新卒採用は単なる人材の調達活動ではなく、組織全体に影響する経営活動だからこそ、採用担当者だけではなく、会社として求める人物像が明確にイメージできるよう、より具体的に言語化することが求められるのです。

【視点2】メディアミックス

メディアミックスとは、企業が採用活動を行う際に、複数の異なるメディア(媒体)を組み合わせて活用する戦略のことです。

求める人物像が明確でも、人物像にマッチする学生に届かなければ意味がありません。従来は大手ナビサイトに載せて待つ採用がスタンダードでしたが、現在は大手ナビサイトに「とりあえずエントリー」「登録しているだけで使っていない」という学生も少なくありません。また、ナビサイトを利用する学生は企業名を直接入力して検索することも多く、知名度に課題がある企業は、学生に発見されにくいといった課題もあります。

革新人材はその企業の変革への姿勢や、自分の思考や挑戦が受け入れられる環境かどうかをよく見ています。そのため、例えばナビサイトで事業内容などの基礎情報を伝えつつ、SNSでは変革や挑戦の背景やプロセスを発信。さらにイベントで社員と対話できる場を作り、ダイレクトリクルーティングで採りたい学生に個別の内容でメッセージを送るなど、方法を組み合わせます。このように、大手採用サービスだけではなく、専門プラットフォームなどを組み合わせることでターゲットへのリーチは最大化しやすくなります。 

自社にマッチする学生が所属するプラットフォームを見極め、自社に合ったメディアを選定し、メディア毎の強みを活かしながら相乗効果を狙っていくことが重要です。

【視点3】ピンポイント就活

「ピンポイント就活」とは、多数の企業に応募せず、数社に限定して選考を受け、狙った企業から内定が出たら就職活動を終了することです。このような活動をしている学生は会社説明会だけではなく、SNSや口コミサイト、決算資料など、あらゆる情報を参照し、多角的な視点で企業を見極めます。エントリー数が少ない分、志望度は高い。だからこそ、刺さらない企業は最初から選択肢に入れてもらえません。

革新人材を採用したいのであれば、従来の一律の採用体制ではなく、革新人材専任の採用担当者の育成が必要です。採用担当者を増やすという意味ではなく、革新人材専用の評価と対話ができる担当者を置くという意味です。革新人材は前例にない人材だからこそ、時に「扱いづらいタイプ」と映ります。だからこそ、一般の採用ではマイナスに見られてしまうかもしれない要素を、金の卵としてポジティブに評価する目と、革新人材が求める思考や挑戦について具体的に伝えられる担当者が必要なのです。

革新人材の採用は偶然では起こりません。言語化、接点の設計、選考中のコミュニケーションまで、一貫した姿勢の積み重ねで成しうるものです。第1回で触れた通り、同質的な組織は短期的な安定をもたらしますが、長期的な成長は望めません。第2回で提示したのは、その組織のスタイルを採用で変えていく方法です。あなたの会社は「狙って採る」設計になっているでしょうか。それとも、「集まった人の中から採る」設計のままでしょうか。長期的な成長は、募集要項の一定義からではなく、採用設計から始まるのです。ここで、「欲しい人材は採れている。問題はその後の定着・活躍だ」という方もいるかもしれません。そこで次回は、「受け入れ側のアップデート」をテーマに、組織が行うべき手法をお伝えします。

— この記事の著者

シーズアンドグロース 代表取締役 河本英之

上智大学卒業後、(株)リンクアンドモチベーション入社。その後、2010年に独立しシーズアンドグロース(株)を設立。「人の可能性を信じるという」理念を掲げ、独自かつフルオーダーメイドのサービスで、大手から中堅・中小企業まで幅広い企業の新卒採用・人材育成を支援する。企業と学生のミスマッチ防止イベント「カレッジ型イベント(R)」では講師を務め、年間5,000人以上の就活生の決断に影響を与える。その他、経営者・人事担当者向けセミナー講師としての登壇、書籍の執筆なども行う

【出典元】

本記事は『月刊 人事マネジメント』26年4月号に掲載されたものです(転載許諾済)。

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